2026.01.27
高齢でも歯石取りはできる?麻酔リスクと当院の考え方
「もう高齢だから、歯石取りは無理ですよね?」
診察室で、私たちがとてもよく聞く言葉です。
確かに、歯石取りには全身麻酔が必要なため、
高齢になるほど麻酔のリスクが心配になるのは当然です。
一方で、「年齢を理由に何もせず放置してしまった結果、もっとつらい状態になってしまった」というケースも、実際には少なくありません。
この記事では、
- 高齢犬・高齢猫でも歯石取りはできるのか
- 麻酔のリスクはどのように考えるべきか
- 当院が歯科治療を判断する際に大切にしている考え方
について、獣医師の立場からわかりやすく解説します。
結論:高齢でも歯石取りは「できる場合」と「見送る場合」がある
まず結論からお伝えすると、
歯石取りができるかどうかは「年齢」だけでは決まりません。
重要なのは、
- 今の全身状態
- 心臓や腎臓などの基礎疾患の有無
- 口の中の状態(歯周病の進行度)
これらを総合的に評価することです。
実際に、
10歳を超えていても安全に歯科治療ができる子もいれば、
まだ若くても麻酔に慎重になるべきケースもあります。
「高齢=歯石取り不可」ではなく、
「今の状態で行うべきかどうか」を一頭一頭判断する
それが当院の基本的な考え方です。
なぜ高齢になると麻酔リスクが上がるのか
高齢犬・高齢猫で麻酔リスクが高くなる理由には、いくつかの要因があります。
臓器の予備能力が低下している
年齢を重ねると、心臓・腎臓・肝臓などの働きは少しずつ低下します。
麻酔薬はこれらの臓器で代謝・排泄されるため、若い頃と同じようにはいきません。
基礎疾患が隠れていることがある
見た目は元気でも、
- 心臓病
- 腎臓病
- 内分泌疾患
などが進行していることもあります。
回復に時間がかかる
麻酔後の覚醒や体力回復に時間がかかるのも、高齢の特徴です。
ただし、これは
「麻酔が危険だから絶対にできない」
という意味ではありません。
事前評価と麻酔管理を丁寧に行うことで、リスクは大きく下げることが可能です。
当院で歯石取り前に必ず行っていること
当院では、高齢犬・高齢猫の歯科治療を検討する際、
以下の点を特に重視しています。
① 血液検査による全身評価
腎臓・肝臓・貧血・炎症の有無などを確認し、
麻酔に耐えられる状態かを判断します。
② 必要に応じた追加検査
心臓に雑音がある場合や既往歴がある場合は、
レントゲン検査や超音波検査などを行うこともあります。
③ 麻酔方法の工夫
- できるだけ体への負担が少ない麻酔薬の選択
- 術中のモニタリングの徹底
- 体温・血圧・呼吸管理
これらを丁寧に行います。
④ 「やらない」という判断も大切にする
検査結果や全身状態によっては、
無理に歯石取りを勧めないこともあります。
当院では
「歯石を取ること自体が目的」ではなく、
その子が少しでも楽に、快適に生活できるかどうか
を最優先に考えています。
歯石・歯周病を放置するリスク
「麻酔が怖いから、もう何もしない」
この選択が、必ずしも安全とは限りません。
歯石がたまった状態は、歯周病が進行している可能性が高く、
- 強い口臭
- 歯のぐらつき
- 慢性的な痛み
- 歯肉からの出血
といった症状が起こります。
さらに歯周病は、
口の中だけの問題ではありません。
細菌が血流に乗って全身に影響し、
心臓・腎臓・肝臓に負担をかけることも知られています。
実際に、
「歯科治療後に食欲が戻った」
「元気に遊ぶようになった」
という高齢の子も少なくありません。
高齢でも歯石取りを検討した方がよいサイン
以下のような症状がある場合は、
一度歯科の相談をおすすめします。
- 口のにおいが強くなった
- 歯が茶色・黒くなっている
- 歯がぐらついている
- 硬いものを避けるようになった
- 食べるスピードが遅くなった
「もう年だから仕方ない」と思われがちですが、
実は歯の痛みを我慢しているだけということもあります。
当院の考え方:年齢ではなく「今の状態」で判断する
当院では、
高齢だからといって一律に歯科治療を断ることも、
逆に無理に勧めることもありません。
- 今の全身状態
- 口の中の重症度
- 治療によって得られるメリット
これらを丁寧に説明したうえで、
飼い主さまと一緒に治療方針を考えます。
「やる・やらない」ではなく、「どう向き合うか」
それが高齢期の歯科治療で最も大切だと考えています。
まとめ|迷ったら、まずは葛西中央どうぶつクリニックへ相談を
高齢でも歯石取りができるケースはあります。
しかし、それは慎重な評価と判断があってこそです。
- 高齢だから無理、と決めつけない
- でも無理な治療はしない
- その子にとって最善の選択をする
それが当院の歯科治療の基本姿勢です。
「この年齢で歯石取りをしても大丈夫なのか」
「今は様子を見るべきなのか」
少しでも迷われたら、
葛西中央どうぶつクリニックまで、お気軽にご相談ください。