2026.02.04
犬の前十字靭帯断裂とは?症状・原因・治療法を獣医師がわかりやすく解説
犬の後ろ足の跛行(びっこ)で来院される原因の中で、非常に多い病気のひとつが
**「前十字靭帯断裂(ぜんじゅうじじんたいだんれつ)」**です。
「急に足をあげるようになった」
「散歩を嫌がるようになった」
「年齢のせいだと思っていた」
このような症状の裏に、前十字靭帯断裂が隠れていることは少なくありません。
この記事では、
- 前十字靭帯断裂とはどんな病気か
- どんな犬に多いのか
- 放っておくとどうなるのか
- 最新の治療の考え方
- 手術が必要なケース・そうでないケース
を、獣医師の立場から、できるだけわかりやすく解説します。
前十字靭帯とは?どんな役割があるの?
前十字靭帯は、膝関節(後肢)を安定させる非常に重要な靭帯です。
簡単に言うと、
- 脛骨(すねの骨)が前にズレるのを防ぐ
- 膝の「グラつき」を抑える
という役割があります。
この靭帯が切れてしまうと、
歩くたびに膝が不安定になり、強い痛みと炎症が起こります。

前十字靭帯断裂は「ケガ」ではなく「病気」
昔は
「ジャンプした時に切れた」
「転んだから断裂した」
と考えられていました。
しかし、現在の獣医学では考え方が変わっています。
👉 多くの犬で
前十字靭帯断裂は“慢性的に進行する変性疾患”
と考えられています。
つまり、
- 靭帯が少しずつ弱くなる
- ある日を境に症状が表に出る
というケースがほとんどです。
そのため
「突然なったように見える」だけ
ということも多いのです。
どんな犬に多い?
特に多い傾向
- 中〜大型犬
- 体重が増えやすい犬
- 避妊・去勢後の犬
- 運動量が急に変化した犬
好発犬種の一例
- ラブラドール・レトリーバー
- ゴールデン・レトリーバー
- ロットワイラー
- 柴犬
- コーギー
※ただし、小型犬でも決して珍しくありません。
よく見られる症状
以下のような症状があれば、要注意です。
- 後ろ足を浮かせる
- 歩き始めが特に痛そう
- 走らなくなった
- 階段を嫌がる
- 座り方が左右非対称
- 完全に足を挙げる
慢性化すると、
- 跛行が良くなったり悪くなったりする
- 「年齢のせい」と誤解されやすい
という特徴があります。
放置するとどうなる?
前十字靭帯断裂を放置すると、
- 膝関節の不安定性が続く
- 半月板損傷を併発
- 変形性関節症(関節炎)が進行
結果として、
「痛みが取れない膝」になってしまう可能性があります。
特に重要なのが、
👉 時間が経ってから治療しても、関節炎は元に戻らない
という点です。
診断はどうやって行う?
① 身体検査
- 膝のグラつき(引き出し徴候)
- 圧迫テスト
② レントゲン検査
- 関節内の腫れ
- 関節炎の進行度
- 他の疾患との鑑別
治療法は大きく2つ
① 保存療法(手術をしない治療)
- 運動制限
- 消炎鎮痛薬
- 体重管理
- リハビリ
小型犬・軽症例では選択されることもあります。
ただし、
👉 膝の不安定性そのものは改善しにくい
という点が重要です。
② 外科手術(現在の標準治療)
現在、中〜大型犬では手術が第一選択とされています。
代表的な手術法:
- TPLO
- TTA
- 関節外制動法
手術の目的は
「切れた靭帯を治す」ことではなく、
「膝がグラつかない状態を作る」ことです。
多くの犬で、
- 痛みの大幅な改善
- 日常生活への復帰
- 関節炎の進行抑制
が期待できます。
反対側の足も注意が必要
前十字靭帯断裂は、
👉 反対側の膝も将来的に断裂するリスクが高い
ことが知られています。
だからこそ、
- 早期診断
- 適切な体重管理
- 床環境の見直し
がとても重要です。
飼い主さんに伝えたいこと
前十字靭帯断裂は、
- 早く見つける
- 正しく診断する
- 犬に合った治療を選ぶ
ことで、
将来の歩き方・生活の質が大きく変わる病気です。
「もう歳だから…」
「少し様子を見ようかな…」
そう思った時こそ、
一度ご相談ください。
当院の考え方
葛西中央どうぶつクリニックでは、
- 丁寧な触診と画像評価
- 飼い主さまへの十分な説明
- 保存療法・手術それぞれのメリットと限界を正直にお伝え
を大切にしています。
「とりあえず手術」ではなく、
その子にとって最善の選択肢を一緒に考える
それが当院の方針です。
参考になる外部リンク(信頼性重視)
- 犬の前十字靭帯断裂(米国獣医整形外科学会)
https://www.acvs.org/small-animal/cranial-cruciate-ligament-disease - 前十字靭帯断裂の最新レビュー(Veterinary Evidence)
https://veterinaryevidence.org - 犬の整形外科疾患解説(RVC)
https://www.rvc.ac.uk
最後に
後ろ足の違和感は、
犬からの大切なサインです。
「もしかして…?」と思ったら、葛西といえば、葛西中央どうぶつクリニックへご相談ください