
🐱 概要(症例紹介)
- 患者:10歳齢 猫 避妊メス
- 主訴:「ここ数日うんちが出ていない」「うんちがコロコロ」
- 生活環境:完全室内飼育、水分摂取やや少なめ
🔍 診察・検査所見
- 腹部触診で結腸部に硬い糞便を触知
- レントゲン検査にて結腸拡張(便塊の貯留)を確認
- 血液検査外注
→ 診断:慢性便秘
💊 治療法
- 皮下補液による脱水改善
- 浣腸処置+ラクツロース(乳糖下剤)内服開始
- 腸運動促進剤(モサプリド)併用で腸蠕動を補助
- 食事療法:可溶性・不溶性繊維を含む腸ケアフードへ変更
📘 考察とエビデンス
猫の便秘は単なる排便トラブルではなく、慢性化すると**結腸機能が低下(巨大結腸症)**することが知られています。
原因は多因子的で、主に以下のようなリスクが報告されています。
🔹 主な原因
- 水分摂取量の不足
- 運動不足・肥満・高齢化
- トイレ環境のストレス
- 毛玉や異物の滞留
- 慢性腎臓病・神経疾患・骨盤変形などの二次性要因
- 特発性
🔹 最新のエビデンス
- 食物繊維と水分補給の併用
猫の便秘管理において「可溶性繊維(サイリウムなど)」と「十分な水分摂取」の組み合わせが
排便頻度と糞便含水量を改善することが報告されています(SAGE Journals, 2024)。 - 腸内細菌(プロバイオティクス)の関与
猫の腸内環境を整えることで便秘発生率が減少したとの研究(MDPI, 2023)。
Bifidobacterium属などの善玉菌増加が便通に良い影響を与える可能性。 - 慢性化による神経変性
長期便秘では結腸壁の神経細胞・間質細胞が減少し、薬剤に反応しにくくなるため、
早期治療が予後を左右することが報告されています(Today’s Veterinary Practice, 2021)。
🧩 当院での取り組み
葛西中央どうぶつクリニックでは、
「便秘を治す」だけでなく「再発を防ぐ」ことを重視しています。
- 水分摂取量の確認
- 腸ケア・毛玉対策フードの提案
- トイレ環境やストレス評価
- プロバイオティクス・整腸サプリの併用指導
再発を繰り返す場合には、慢性腎臓病や甲状腺機能低下症など
背景疾患の精査も同時に行います。
🐾 飼い主さまへのメッセージ
猫ちゃんが「トイレに長くこもる」「便が出ない」「お腹が張っている」などの様子を見せたら、
それは“体からのSOS”です。
放置すると治療が難しくなるため、早めのご相談をおすすめします。
「便秘は、生活習慣病のひとつ」と考えることで、
日々の食事・お水・トイレ環境を見直すきっかけになります。