お知らせ詳細

NEWS

腫瘍科

猫の腸腺癌

猫の腸腺癌とは

猫の腸腺癌(intestinal adenocarcinoma)は、消化管の上皮細胞由来の悪性腫瘍であり、特に小腸や大腸に発生することが多い腫瘍です。

猫の消化管腫瘍の中ではリンパ腫に次いで多く、消化管腫瘍の20〜35%を占めると報告されています。

特徴としては

  • 強い局所浸潤性
  • 高い転移率
  • 診断時には進行していることが多い

という「非常に悪性度の高い腫瘍」です。


好発年齢・発生部位

  • 好発年齢:10歳以上の高齢猫 
  • 発生部位:
    • 小腸(約70%) 
    • 大腸・直腸

また、シャム猫でやや多いという報告もあります。


主な症状

腸腺癌は進行が緩徐な場合も多く、慢性的な消化器症状として現れます。

よくある症状

  • 体重減少
  • 食欲低下
  • 嘔吐
  • 下痢または便秘
  • 血便・黒色便
  • 腹痛

これらは一般的な消化器疾患と区別がつきにくく、
慢性腸炎として治療されている中で発見されるケースも少なくありません。


診断方法

1. 画像診断

  • 超音波検査:腸壁肥厚・層構造消失
  • X線検査:腸閉塞の評価

2. 細胞診・組織診

  • FNA(穿刺吸引)
  • 内視鏡生検
  • 外科生検(確定診断)

3. 血液検査

  • 貧血(慢性出血)
  • 低アルブミン

最終的には組織診断が必須です。


治療戦略(最新エビデンス)

猫の腸腺癌の治療は、
外科手術+補助療法(化学療法)が基本になります。


① 外科手術(第一選択)

腸腺癌に対する最も重要な治療は
👉 腫瘍の外科的切除

エビデンス

  • 手術あり:中央値165日
  • 手術なし:中央値30日
    → 明らかな延命効果あり 

また、別の研究では

  • 平均生存期間:5〜15ヶ月

と報告されています。

👉 結論:切除可能なら手術は必須


② 術後化学療法(アジュバント)

ここが臨床的に最も議論されるポイントです。

主な使用薬剤

  • カルボプラチン
  • ドキソルビシン
  • ミトキサントロン
  • ゲムシタビン
  • トセラニブ(Palladia)

エビデンスの現状(重要)

結論から言うと:

👉 明確な生存延長効果は証明されていない


ただし例外あり

一部の研究では:

  • カルボプラチン併用
    → 生存269日(単独手術56日より延長) 

👉 つまり

  • 症例選択で有効な可能性
  • ただしエビデンスは弱い(レトロスペクティブ)

臨床的な位置づけ

✔ 推奨されるケース

  • マージン不完全
  • リンパ節転移あり
  • 腹膜播種疑い

✔ 消極的適応

  • 完全切除・転移なし

③ 緩和治療

進行例では以下も重要:

  • NSAIDs
  • 食欲増進剤
  • 抗吐剤
  • 栄養管理
  • 鎮痛

転移・再発率(重要)

猫の腸腺癌は非常に再発率が高いです。

  • リンパ節転移:約52% 
  • 腹膜播種:約81% 
  • 再発率:約43% 

👉 「見えている腫瘍だけの病気ではない」


予後(生存期間)

最新データ(2022年)

  • 無増悪期間:203日
  • 全生存期間:284日 

総合的な予後

状態生存期間
手術なし1〜3ヶ月
手術あり5〜15ヶ月
化学療法併用明確な延長証明なし

👉 基本的には予後不良(guarded〜poor)


予後因子(重要ポイント)

悪い予後

  • 高い分裂指数(mitotic count) 
  • 転移あり
  • 粘液産生型(mucinous)

良い予後

  • 完全切除
  • 転移なし
  • 腺管型

まとめ

猫の腸腺癌は

  • 高齢猫に多い
  • 非常に悪性度が高い
  • 手術が唯一の根治的治療
  • 化学療法の効果は限定的
  • 再発・転移が非常に多い

👉 早期発見・早期手術が最重要


参考文献(論文)

  • Czajkowski et al. 2022
    Outcome and prognostic factors in cats with intestinal adenocarcinoma 
  • Green et al. 2011
    Surgical vs non-surgical treatment of feline intestinal adenocarcinoma 
  • Arteaga et al.
    Colonic adenocarcinoma with carboplatin 
  • Kosovsky et al. 1988
    Small intestinal adenocarcinoma in cats 
  • MSD Veterinary Manual
    Gastrointestinal neoplasia 
ご予約はこちら