院長ブログ

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2026.09.11

「1週間前から元気がない」を様子見する怖さ|高齢の犬・猫に健康診断が必要な理由

「1週間くらい前から、なんとなく食欲がなくて……」

「ここ1〜2週間、寝ている時間が増えました」

「歳だからかなと思って、少し様子を見ていました」

高齢の犬や猫を診察していると、このようなお話を伺うことがあります。

もちろん、数日食欲にムラがあったからといって、必ず重大な病気が隠れているわけではありません。

しかし私たち獣医師が怖いと感じるのは、

「少し元気がないだけだと思っていた」
「歳のせいだと思っていた」
「もう少し様子を見ようと思っていた」

という期間の間に、病気が大きく進行してしまうことです。

実際に動物病院では、

「1週間前から食欲がない」

という主訴で来院し、検査をしてみると、重度の腎臓病や肝臓病、心臓病、あるいは進行した悪性腫瘍が見つかることがあります。

そして残念ながら、

「もっと早い段階で見つかっていれば、治療の選択肢があったかもしれない」

と思う症例に出会うこともあります。

今回は、西葛西・葛西・江戸川区で犬猫の診療を行う葛西中央どうぶつクリニックが、日々の診療を通して飼い主様にぜひ知っていただきたい、

「高齢の犬・猫の体調不良を長期間様子を見ることの怖さ」

そして、

「元気なうちに健康診断を受けることの重要性」

についてお話しします。


「まだ食べているから大丈夫」は、本当に大丈夫でしょうか?

犬や猫は人間のように、

「最近胃が重い」

「少し息苦しい」

「お腹に違和感がある」

「以前より疲れやすい」

と自分から伝えることができません。

そのため病気の初期に飼い主様が気付ける変化は、非常に小さいことがあります。

例えば、

・ご飯を残すようになった
・食べるスピードが遅くなった
・おやつなら食べるがフードは残す
・散歩に行きたがらなくなった
・寝ている時間が増えた
・階段を上らなくなった
・なんとなく元気がない
・少し痩せた気がする
・水を飲む量が変わった
・吐く回数が増えた

などです。

こうした変化は、「年齢のせいかな」と思われやすい症状でもあります。

しかし、

「高齢だから元気がなくなった」のではなく、「病気があるから元気がなくなっている」可能性を一度考える必要があります。

「歳を取ったこと」自体は病気ではありません。

年齢を重ねることで病気が増えることはありますが、食欲低下や体重減少、活動性低下をすべて「老化」で片付けてしまうことは危険です。


犬や猫は「かなり悪くなるまで普通に見える」ことがあります

特に注意したいのが猫です。

猫は体調不良を隠す傾向があり、病気の初期には外見上ほとんど変化が分からないことがあります。

「昨日までは普通だったのに、急に悪くなった」

というケースでも、実際には昨日突然病気になったのではなく、

数週間〜数か月前から少しずつ病気が進行し、身体が耐えられる限界を超えたところで症状が目立った

ということがあります。

犬でも同じです。

例えばお腹の中に腫瘍があったとしても、初期には元気・食欲がほぼ正常ということがあります。

腫瘍が徐々に大きくなり、

「最近食欲が落ちた」

「少し元気がない」

となった段階で検査をすると、すでに大きな腫瘤になっていたり、他の臓器へ転移していたりすることもあります。

つまり、

「症状が出てから病気が始まった」とは限らない

ということです。


「1週間様子を見る」という時間の重さ

若く健康な犬が一度だけ吐いたものの、その後は食欲も元気も十分にある。

このような場合には、状況によって経過観察になることもあります。

しかし、

10歳、12歳、15歳といった高齢の犬・猫で、「明らかに以前と違う状態」が何日も続いている場合は話が変わります。

特に、

「食欲が落ちているけれど少しは食べるから」

「寝ている時間が増えたけれど歳だから」

「少し痩せたけれど元気だから」

と1週間、2週間と様子を見ている間に、病気が進行する可能性があります。

私たち獣医師が心配するのは、この時間です。

早く診断できれば、

「治すための治療」

を選択できた病気が、

発見が遅れたことで、

「症状を和らげるための治療」

しか選択できなくなることがあります。

もちろん、すべての病気が早期発見によって治るわけではありません。

早く発見しても治療が難しい病気もあります。

しかし、早期に発見することで、

・手術できる可能性が高くなる
・腫瘍が転移する前に治療できる可能性がある
・腎臓病などの慢性疾患を早期から管理できる
・心臓病の進行度を把握できる
・治療方法を検討する時間を確保できる
・本人が元気な状態で検査や治療を受けられる
・飼い主様が治療方針について考える時間を持てる

といったメリットがあります。

「もう少し早ければできたことがあったかもしれない」

という状況を、できるだけ減らすこと。

それが健康診断や早期受診の大きな目的です。


高齢の犬・猫で注意したい病気

高齢になると、さまざまな病気のリスクが高くなります。

代表的なものとして、

悪性腫瘍

犬・猫ともに高齢になるほど腫瘍性疾患に遭遇する機会が増えます。

リンパ腫、乳腺腫瘍、脾臓腫瘍、肝臓腫瘍、消化管腫瘍、肺腫瘍、口腔内腫瘍など、その種類は非常に多岐にわたります。

腫瘍の種類によっては、かなり大きくなるまで症状がほとんど出ないこともあります。

慢性腎臓病

特に高齢猫で非常に重要な病気です。

初期には症状がほとんどなく、

「水を飲む量が少し増えた」

「以前より痩せてきた」

程度の変化しかない場合があります。

進行すると食欲低下、嘔吐、脱水、元気消失などがみられます。

心臓病

犬では僧帽弁閉鎖不全症、猫では肥大型心筋症などが代表的です。

心臓病も初期には元気に生活している場合があります。

進行すると、咳、呼吸数増加、運動を嫌がる、呼吸困難などにつながることがあります。

内分泌疾患

犬の副腎皮質機能亢進症や糖尿病、猫の甲状腺機能亢進症など、高齢になるにつれて注意したい病気があります。

肝臓・胆嚢疾患

血液検査をして初めて肝酵素異常が判明したり、腹部超音波検査で胆嚢や肝臓の異常が見つかったりすることがあります。

このように、

「元気そうだから病気がない」とは限りません。

だからこそ、症状が出てから病院へ行くだけではなく、

症状がない段階で身体をチェックする「健康診断」

が重要になります。


健康診断の目的は「病気を見つけること」だけではありません

健康診断というと、

「病気があるかどうかを調べる検査」

というイメージが強いかもしれません。

もちろんそれも大きな目的ですが、もう一つ非常に重要なのが、

その子自身の「健康なときの基準値」を残しておくことです。

例えば腎臓の数値。

基準範囲内であっても、

昨年:クレアチニン 0.8
今年:クレアチニン 1.1
半年後:クレアチニン 1.4

と変化していたらどうでしょうか。

最後の数値だけを見るより、

「この子は徐々に数値が上昇している」

という情報が得られます。

体重も同じです。

4.8kgだった猫が、

4.6kg
4.4kg
4.1kg

と少しずつ減っている。

毎日一緒に暮らしていると、数百グラムずつの変化には意外と気付きません。

しかし診療記録として体重を残していれば、変化を客観的に確認できます。

血液検査、尿検査、体重、血圧、身体検査などを定期的に記録していくことは、

「正常か異常か」だけではなく、「以前と比べてどう変化しているか」を判断するために非常に重要です。


海外のガイドラインでも高齢犬・猫の定期検査が推奨されています

American Animal Hospital Association(AAHA)が公表している「2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats」では、高齢の犬・猫について、健康な状態でも定期的な医学的評価を行うことが推奨されています。

同ガイドラインでは、高齢犬・猫に対するCBC(血球検査)、血液生化学検査、尿検査などについて、6〜12か月ごとが推奨頻度として示されています。

また、血圧測定などについても定期的な評価が推奨されています。

猫についても、AAFP(American Association of Feline Practitioners)のシニアケアガイドラインでは、高齢猫では定期的な身体検査と基礎的な検査を行い、個々の数値を継続して追跡することの重要性が指摘されています。

つまり、

「病気になったら検査をする」のではなく、「病気になる前・症状が出る前から定期的に評価する」

という考え方が、シニア犬・シニア猫の医療では重要になっています。


何歳から健康診断を受ければいい?

犬の場合、犬種や体格によって老化のスピードが大きく異なります。

一般的に大型犬は小型犬より早くシニア期に入ります。

そのため、

「○歳になったら全員シニア」

と一律に考えるのではなく、その子の犬種、体格、既往歴などを考慮する必要があります。

一方、猫では10歳を超えるとシニア期として、より注意深い健康管理が重要になります。

当院としては、

若い犬・猫でも少なくとも年1回、高齢期に入った犬・猫では半年に1回程度

を一つの目安として健康状態を確認することをおすすめしています。

ただし、持病がある場合や過去の検査で異常がある場合には、3か月ごとなど、さらに短い間隔での検査が必要になることがあります。


高齢の犬・猫では、血液検査だけで十分?

「毎年血液検査をしているから大丈夫」

と思われることがあります。

しかし、

血液検査だけでは見つからない病気もあります。

例えば、一部の腫瘍では、かなり進行していても血液検査に大きな異常が出ないことがあります。

そのため年齢や症状、身体検査の結果によって、

・血液検査
・尿検査
・血圧測定
・レントゲン検査
・腹部超音波検査
・心臓超音波検査

などを組み合わせることがあります。

特に高齢の犬・猫では、

「血液検査が正常=すべての病気がない」ではありません。

健康診断では年齢、犬種・猫種、これまでの病歴、身体検査などから、その子に必要な検査を考えることが大切です。


こんな変化があったら「歳だから」と様子を見すぎないでください

高齢の犬・猫で次のような変化がみられた場合には注意してください。

・食べる量が明らかに減った
・丸1日ほとんど食べない
・体重が減ってきた
・寝ている時間が急に増えた
・散歩の距離が短くなった
・以前より疲れやすい
・嘔吐や下痢が続く
・水を飲む量が増えた、または減った
・尿量が増えた
・呼吸が速い
・咳をする
・お腹が膨らんできた
・身体にしこりがある
・口臭が急に強くなった
・排便、排尿の様子が変わった
・性格や行動が変わった
・なんとなく以前と違う

特に、

「なんとなく元気がない」

という飼い主様の感覚は大切です。

毎日一緒に生活している飼い主様だからこそ気付ける変化があります。

「こんなことで病院に行っていいのかな」

と思う必要はありません。

何も問題がなければ、それはそれで良いことです。


「食べなくなったら病院へ」では遅いことがあります

私たちが健康診断をおすすめする最大の理由はここにあります。

理想は、

病気で食べられなくなってから病院へ来ることではありません。

まだ食べている。

まだ散歩にも行ける。

まだ普通に生活している。

その段階で病気を見つけることです。

治療が必要になった場合でも、体力が十分にある状態の方が選択できる治療が増える可能性があります。

逆に、

食べられない
立てない
重度の脱水がある
呼吸が苦しい
著しく痩せている

という状態になってから病気が見つかると、まず全身状態を安定させる必要があったり、希望する検査や治療を行えなかったりすることがあります。

「症状がないときに病院へ行く」ことには、大きな意味があります。


健康診断をしても、すべての病気を防げるわけではありません

ここは非常に大切なので、誤解のないようにお伝えします。

健康診断を半年ごとに受けていたとしても、すべての病気を早期発見できるわけではありません。

進行の速い悪性腫瘍もあります。

血液検査や画像検査だけでは発見できない病気もあります。

そして早期に発見しても、治療が難しい病気もあります。

したがって、

「健康診断を受けていれば絶対に安心」ではありません。

しかし定期的に診察や検査を行うことで、

「以前はなかったしこりがある」

「半年で体重が減っている」

「腎臓の数値が少しずつ上昇している」

「新しく心雑音が聞こえる」

「腹部超音波検査で以前にはなかった変化がある」

など、

病気を疑うきっかけを早く得られる可能性があります。

それが健康診断の価値だと私たちは考えています。


「もっと早く連れてくればよかった」を減らしたい

病気がかなり進行した状態で初めて診断がついたとき、

飼い主様から、

「もっと早く連れてくればよかった」

と言われることがあります。

しかし、犬や猫の病気は分かりにくいものです。

特に毎日一緒にいるからこそ、少しずつ起こる変化には気付きにくいことがあります。

だからこそ大切なのは、

飼い主様だけで病気を見つけようとすることではありません。

元気なときから動物病院を利用し、

体重を測り、

身体検査を受け、

必要に応じて血液検査や尿検査、画像検査などを行い、

「この子の健康な状態」を獣医師と一緒に記録していくこと

が重要だと考えています。


葛西・西葛西で高齢犬・高齢猫の健康診断をご検討の方へ

葛西中央どうぶつクリニックでは、西葛西・葛西を中心に、江戸川区周辺の犬・猫の診療を行っています。

私たちが健康診断で目指しているのは、

病気を探して不安にさせることではなく、元気な時間をできるだけ長く守ることです。

「最近少し痩せた気がする」

「以前より寝るようになった」

「食欲に少しムラが出てきた」

「もう10歳を超えたので一度しっかり調べたい」

その程度でも構いません。

そして、今まったく症状がない子でも構いません。

むしろ、

元気だからこそ健康診断を受けてほしい

と私たちは考えています。


まとめ|高齢の犬・猫では「様子を見る期間」を長くしすぎない

高齢の犬・猫の診療をしていると、

「1週間前から食欲がない」

「2週間前から元気がない」

という状態で来院し、その時点ですでに重い病気が進行しているケースに遭遇することがあります。

もちろん、すべての体調不良が重大な病気というわけではありません。

しかし高齢の犬・猫では、

「歳だから」
「まだ少し食べているから」
「もう少し様子を見よう」

という判断を長期間続けることには注意が必要です。

そして、本当に目指したいのは、

「具合が悪くなったらすぐ病院へ行く」ことだけではありません。

さらに一歩進んで、

「具合が悪くなる前に病院へ行く」こと。

定期的な健康診断によって、その子の健康な状態を記録し、小さな変化をできるだけ早く見つける。

それが高齢の犬・猫と長く暮らしていくうえで、とても大切な健康管理の一つです。

「まだ元気だから健康診断は必要ない」

ではなく、

「まだ元気だからこそ、一度調べておこう」

そう考えていただける飼い主様が増えれば、

「もう少し早く見つかっていれば」

という症例を少しでも減らせるのではないかと思っています。

葛西・西葛西・江戸川区で、犬・猫の健康診断や高齢期の健康管理について気になることがありましたら、お気軽に葛西中央どうぶつクリニックまでご相談ください。

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