症例
ペキニーズ 14歳 避妊メス
来院理由
数日前から嘔吐、下痢、食欲不振
身体所見
活動性低下
検査
【血液検査】
肝臓酵素高値、CRP高値
【腹部エコー検査】
胆嚢周囲の低エコー所見あり

診断
胆嚢破裂
方針
破裂による胆汁性腹膜炎の進行を疑い、外科手術を検討
術後
肝臓酵素とCRPが徐々に低下、本人の活動性と下痢も改善傾向
【病理検査】
慢性化膿性胆嚢炎
胆嚢とはどんな臓器?
胆嚢は肝臓のすぐ近くにある袋状の臓器です。
肝臓で作られた胆汁を一時的に貯め、食事の際に十二指腸へ送り出します。
胆汁には
- 脂肪を消化する
- 老廃物を排泄する
という重要な役割があります。
実は胆嚢そのものは無くても生活できます。
そのため重度の病気では胆嚢摘出術が選択されます。
胆嚢破裂とは?
胆嚢の壁が裂け、胆汁がお腹の中へ漏れる状態です。
胆汁は非常に刺激が強く、
胆汁性腹膜炎
を起こします。
胆汁性腹膜炎は敗血症やショックへ進行しやすく、命に関わる病気です。
なぜ胆嚢は破裂するの?
最も多い原因は
胆嚢粘液嚢腫
です。
胆汁がゼリー状になり、
胆嚢の中がパンパンになります。
すると
- 血流障害
- 壁の壊死
- 穿孔(破裂)
が起こります。
その他には
- 胆石
- 胆嚢炎(感染)
- 外傷
- 腫瘍
などがあります。
なりやすい犬種
胆嚢粘液嚢腫は
- シェットランド・シープドッグ
- コッカー・スパニエル
- ミニチュア・シュナウザー
- ポメラニアン
- チワワ
- トイ・プードル
などで比較的多くみられます。
また
- 高齢犬
- クッシング症候群
- 甲状腺機能低下症
- 高脂血症
もリスクになります。
症状
初期は症状がほとんどありません。
進行すると
- 食欲低下
- 嘔吐
- 元気消失
- 発熱
- お腹を痛がる
- 呼吸が速い
- 黄疸
- ぐったりする
などが見られます。
破裂すると数時間〜1日で急激に悪化することもあります。
検査
血液検査
多くは
- ALT
- ALP
- GGT
- ビリルビン
が上昇します。
炎症が強ければ
- 白血球増加
- CRP上昇
も認めます。
超音波検査
最も重要な検査です。
以下を確認します。
- キウイフルーツ様パターン
- 胆嚢壁肥厚
- 胆汁漏出
- 腹水
- 胆管拡張
胆嚢破裂では腹水が見つかることもあります。
腹水検査
腹水中のビリルビン濃度が血液より高い場合、
胆汁性腹膜炎を強く疑います。
治療
内科治療
軽度なら
- 点滴
- 抗菌薬
- 鎮痛剤
- 肝保護剤
- ウルソデオキシコール酸(適応を慎重に判断)
- SAMe製剤
などを使用します。
しかし
胆嚢破裂では内科治療だけで助かることはほとんどありません。
胆嚢摘出手術とは
胆嚢を完全に取り除く手術です。
同時に
- 漏れた胆汁
- 壊死組織
- 腹腔洗浄
を行います。
必要に応じて
- 胆管閉塞の確認
- 肝生検
- 細菌培養
も実施します。
手術時間
通常は
約1〜2時間
ですが、
胆汁性腹膜炎では2〜3時間以上かかることもあります。
手術後の入院
通常
3〜7日程度
重症例では
1週間以上になることがあります。
手術のリスク
胆嚢摘出は比較的確立された手術ですが、
重症例では
- 麻酔リスク
- DIC
- 敗血症
- 膵炎
- 胆汁漏出
- 肝障害
などが起こる可能性があります。
予後
胆嚢が破裂する前に手術できれば、
予後は比較的良好です。
一方、
胆汁性腹膜炎を起こした場合は死亡率が高くなります。
しかし、
適切な手術と集中治療により救命できる犬も少なくありません。
重要なのは
「様子を見る」のではなく、適切なタイミングで手術を行うことです。
予防できる?
完全な予防はできませんが、
胆泥症や胆嚢粘液嚢腫を早期に見つけることで破裂を防げる可能性があります。
以下のような犬では定期的な腹部超音波検査がおすすめです。
- シニア犬
- 高脂血症
- クッシング症候群
- 甲状腺機能低下症
- 胆泥症を指摘されたことがある犬