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外科

若齢猫の脛骨粗面成長板骨折

症例


猫 10ヶ月 避妊メス

来院理由

左後肢の美っこ、負傷の原因不明 夜間で打撲と診断

身体所見

院内でも跛行、脛骨粗面の圧痛あり

検査

【レントゲン検査】

左脛骨粗面の変異を確認↓

右側は偏位を認めない↓

方針

骨折部安定化のため、手術を検討

Kワイヤによる固定を実施

術後

包帯を数日維持し、1週間で退院

.猫の脛骨粗面成長板骨折

脛骨粗面成長板骨折は、骨格未成熟な猫に生じる比較的まれな骨折で、膝蓋靱帯が付着する脛骨粗面の成長板が牽引力によって剥離するものです。近位脛骨には、近位脛骨骨端の成長板と脛骨粗面の成長板という2つの独立した成長板が存在し、猫では通常、生後約36~44週で癒合して一つの成長部になります。

発症・原因

多くは若齢猫の外傷に伴って発生します。ジャンプや転落、交通事故などによる急激な膝関節伸展・大腿四頭筋の牽引力が、未成熟な脛骨粗面成長板に加わることで発生します。

脛骨粗面単独の剥離の場合、分類上はSalter-Harris I型に相当する病変として扱われることがあります。

2. 臨床症状

典型的には、

急性の後肢跛行
患肢の非負重~部分負重
膝関節周囲の疼痛
脛骨粗面周囲の腫脹
脛骨粗面の変位・不整


などが認められます。

特に脛骨粗面が近位へ転位していることが重要なX線所見です。

3. X線検査

基本的には膝関節を含む頭尾方向・内外側の2方向撮影で診断します。

内外側像では、

脛骨粗面の近位変位
成長板の離開
骨片の転位
周囲軟部組織の腫脹

などを確認します。

若齢猫では正常な成長板そのものがX線上で透過性を示すため、反対側との比較が診断の助けになります。

4. 治療

治療方針は転位の程度と膝伸展機構の破綻の有無で決定します。

転位がほとんどなく、膝伸展機構が維持されている場合
→ 外固定や安静による保存療法が選択肢になります。

明らかな転位がある場合
→ 原則として整復・内固定が推奨されます。

猫の成長板骨折全般では、K-wireによる固定がよく用いられます。猫の外傷性成長板骨折36例の報告では、34例が外科的固定を受け、そのうち24例で交差K-wire固定が使用されています。全体として28例がgood、4例がfair、2例がpoorという成績でした。

脛骨粗面骨折では、K-wire+テンションバンドワイヤーなどによって大腿四頭筋―膝蓋骨―膝蓋靱帯からなる伸展機構を安定化させる方法が考えられます。

5. 特に注意すべき点

この骨折で重要なのは、単に骨折を癒合させることではなく、膝伸展機構を正常に再構築することです。

また、成長板を損傷するため、

早期の成長板閉鎖
脛骨の成長障害
変形
膝関節機能障害

などの可能性があります。

猫の成長板骨折36例では、X線フォローできた34骨折のうち23例で成長板閉鎖が確認され、そのうち15例が早期閉鎖と判断されています。ただし、これが必ずしも臨床的に大きな問題につながったわけではありません。

6. 予後

適切に整復・固定できれば予後は概ね良好です。

猫の成長板骨折全般でも内固定後の成績は良好な症例が多く、また若齢動物では骨癒合も比較的速やかです。

主要参考文献
Rubinos C, Meeson RL.
Traumatic physeal fractures in cats: a review of 36 cases (2010–2020).
Journal of Feline Medicine and Surgery. 2022;24(2):98–106.
doi:10.1177/1098612X211005886.

Altunatmaz K, Guzel Ö, Demirutku A.
Avulsion fractures of the tibial tuberosity in a cat and dogs.
Medycyna Weterynaryjna. 2006;62(8):897–899.

Schwarzmann P, Park B, Irgang M, Knell S, Forterre F.
Biomechanical evaluation of three different fixation methods in tibial tuberosity transposition in cats.
Journal of Feline Medicine and Surgery. 2025.
doi:10.1177/1098612X251381489.

Meeson RL, et al.
Percutaneous tibial physeal fracture repair in small animals: technique and 17 cases.

BSAVA Manual of Canine and Feline Fracture Repair and Management.
Tibia and fibula.

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